研究概要 |
高齢化社会において急増する寝たきり老人の衛生衣料など、生活環境の"衛生"は身近で解決が急がれる問題である。現在、多くの有機系・無機系の抗菌剤が使用されている。しかし、多くの有機系抗菌剤は溶出型であり、繊維(特に衣類)では皮膚との直接的な接触のため安全性が問題である。本研究では、繊維表面にフルオロアルキル基を固着して耐久性のある防汚性を付与すると同時に、抗菌性能を有するセグメントを新規に導入して、非溶出型の有機系抗菌剤の開発を行った。研究成果を以下に概要する。 1 各種フルオロアルキル基含有カチオン系オリゴマー類を合成し、セルロースフィルム(綿繊維モデル)を処理した結果、優れた撥水・撥油性が得られたが水との接触で徐々に溶出して低下した。 2 カチオン系オリゴマーによる改質セルロース試料は、大腸菌ならびに黄色ブドウ状球菌に対する抗菌性、特に、黄色ブドウ状球菌に優れた抗菌性を示した。 3 フルオロアルキル基含有カチオン系オリゴマー+シランカップリング剤併用系において、耐水性が向上し抗菌性も同程度に示した。 4 特に抗菌性に優れるホスホニウム型に注目し、トリメトキシビニルシランとの共重合によりホスホニウムセグメントを有するコオリゴマー類を開発した。改質セルロースは非常に優れた防汚性と抗菌性を有していた。 5 上記ホスホニウムセグメントを有するコオリゴマー類をさらに進展させ,繊維の表面官能基と共有結合を形成できるブロックイソシアネート型のフルオロアルキル基含有オリゴマー類の新規開発に成功した。 6 これで処理したガラスやセルロースは優れた撥水・撥油性(防汚性)を示すとともに、改質処理セルロースは大腸菌ならびに黄色ブドウ状球菌に対する抗菌性、特に、黄色ブドウ状球菌に優れた抗菌性を示した。さらに、防カビ性にも優れていた。 以上、非溶出型の防汚・抗菌加工という新規なシステムの開発に成功した。
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