研究概要 |
廃羊毛の機能性高分子材料への再資源化を最終目的として,これまでの研究で化学処理による吸湿・吸水性の付与を試みてきた。今年度は羊毛繊維のギ酸処理とサクシニル化を試み,その吸湿性および吸水性向上への効果を検討した。ギ酸処理は70〜90℃の適宜な温度のギ酸中で羊毛繊維を浸漬し,1時間振とう,もしくはこの後さらにギ酸中室温で超音波処理して行った。羊毛をギ酸処理すると繊維表面のスケールが脱離し,吸水量が15〜27g/g・wool(未処理羊毛4g/g・wool)に向上したが,吸湿性は未処理羊毛と大きな差は認められなかった。ギ酸処理羊毛をサクシニル化し,付加率4.9〜6.5%のギ酸処理/サクシニル化羊毛繊維を得た。このものの吸水量は16〜21g/g・woolでギ酸処理羊毛と比較して向上は認められなかった。これは,これまでの高い吸水性を示したサクシニル化羊毛に比べて,無水コハク酸の付加率が低いことに起因することが推測される。一方,吸湿性は向上しており,82.5%RHの高湿度条件下の水分率は21.9〜23.5%であった。これらのサクシニル化羊毛が土壌改質材などに使用される可能性を検討するため,このものの土壌中および活性汚泥中での生分解性を評価した。土壌中ではギ酸処理およぴ未処理羊毛の生分解速度には明確な差は認められなかったが,これらの試料に比べギ酸処理/サクシニル化羊毛の生分解速度は明らかに速かった。活性汚泥中での生分解性試験では,ギ酸処理およびギ酸処理/サクシニル化羊毛は共に未処理羊毛より著しく速く分解した。
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