研究概要 |
本研究では高い消臭,抗菌機能を持ち,さまざまな色を持つ羊毛および綿染色布の検討と,焼却処分されている羽毛,絹,羊毛などの廃棄物を消臭・抗菌材料として再生するための検討を行った. 綿布,羊毛布,輸入ダウンに約20%含まれる損傷羽毛を金属塩(銅他)で先媒染後,数種の含金属直接染料(C.I.Direct Black 112他),またはアゾ系酸性染料(C.I.Acid Mordant Yellow 3他)で染色し,再び金属塩で後媒染して,染色物を得た.導入した金属量は原子吸光法で定量した.試料を2Lのテドラーバッグに入れ,検知管法で臭いモデルとして用いたエチルメルカプタン,アンモニア,酢酸などの残存率を求めた.綿染色布に対する抗菌検査は(財)日本化学繊維検査協会に依頼した. エチルメルカプタンに対する綿布,羊毛布の消臭効果は,染色布<(先媒染+染色)布<(先媒染+染色+後媒染)布と,銅による媒染を重ねると増大した.綿媒染布は羊毛媒染布に比較し,含銅量が約1/10であるにも係らず,半減時間が最大40分と高い消臭効果を示した.綿媒染布の場合,表面近傍に銅が染着しているものと考えられる.一方,羽毛はSEM観察から表面積は活性炭の1/1000であったが,エチルメルカプタンに対する媒染物の消臭速度はキムコと同程度で,半減時間は5〜10分であった.綿・羊毛媒染布より高い消臭効果は羽毛の細孔への銅の高い染着によるものと考えられる.銅の抗菌性能は既知であるが,綿媒染布に対する大腸菌,黄色ぶどう球菌,MRSAの静菌活性値はそれぞれ6.1,5.3,5.5以上であり,高い抗菌性を示すことがわかった.現在,ガスクロマトグラフィーによる消臭機構の検討を進めている.
|