日本の国籍法では、国際結婚から生まれた二重国籍を持つ子どもは、22歳になるまでに、どちらか一つの国籍を選ばなくてはならない。しかしながら、この調査ではこれらの子ども達は、二重国籍を維持することを選択している。この調査の目的は、二重国籍を維持する意思決定の過程とその影響要因を探ることにある。 国内の質問紙調査は、2003年1月に328の国際結婚をした多文化家族に郵送され75の子票と141の親票が回収され分析された。また2004年2月に、国外に居住する180家族を対象として郵送調査を行い子票33票、親票58票が回収され分析された。加えて2002年7月から2003年3月にかけて国外、国内に居住する国際結婚から生まれた子どもを対象にしてインタビュー調査を行った。 質問紙調査の対象者の多くは、母親が日本国籍で父親が外国籍である。影響要因は相関分析と重回帰分析によって分析された。 この調査の結果は以下のように結論づけられる。 1.国内、国外のほとんどの子ども達は海外居住や海外就労のために二重国籍を選択する傾向がある。 2.日本の国籍法を知っている子どもほど、二重国籍を選択する傾向がある。 3.両親が二つの国の文化を教育しているほど、二重国籍を選択する傾向にある。 4.インタビューから、差別体験を持っている国際結婚から生まれた子どもは、自分の能力を伸ばしたいと考える傾向があり、より二つの国の文化を維持したいと思う事例が多かった。 5.海外における調査では、二つの文化を維持している子どもほど、アイデンティティーを確立しやすい傾向が見られた。
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