中等学校家庭科の食物領域に国際理解教育的視野を導入するため、1)中学校および高等学校の学習指導要領並びに教科書の調査、2)インドネシアおよび日本の中学生、高校生、大学生を対象にアンケート調査、3)食物学専門のインドネシア人を招聘し、インドネシア人の生活・食べ物について中学校生を対象に話をし、生徒の興味・関心度を調査した。 中学校・高等学校の家庭科の学習指導要領には明確な国際理解教育の視点は一切ないが、教科書には国際理解教育的視野に立った内容の記述が認められた。中学校よりも、高等学校の教科書の方に多かったが、明確に国際理解教育の立場はとっていなかった。 インドネシア人生徒・学生は日本に関する知識を豊富に有していた。それに対し日本人生徒・学生は東北アジアに比べ、東南アジアに関する事柄の知識が乏しく、東南アジアから多量に輸入し、知らないうちに食べている食糧(パーム油やタピオカ)に対する知識もなかった。東南アジアのエビ・魚介類、果物を日本が輸入していることは知っていた。 インドネシア人によるインドネシア人の生活・食べ物の話は、日本人中学生にインドネシアに興味・関心を惹起させただけでなく、広く世界の食べ物に興味を拡大させたり、あるいは日本の食文化・伝統食品に関心を凝縮させたりし、効果的であった。東南アジアに関する日本人生徒・学生の興味・関心の低さと知識不足の原因の一つは、東南アジア人から彼らの生活について話を聞く機会が少ないことが考えられる。 食べ物は世界共通の話題になるので、国際理解教育の充実に役立つので、食べ物の流通が世界的規模で動いている現実から、食べ物そのものと食べ物の機能を学習の対象にする家庭科食物領域では、世界的視野に立ち、学習する必要があり、東南アジアの食糧・環境と日本の食生活が密接な関わりがあることを、生徒・学生に自覚させる必要がある。
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