研究概要 |
本年度は、牛肉を砂糖液で加熱したとき、硬さが低下するという説を確かめ、また、その硬さの変化の現象を捉えて原因を探るための研究を行った。試料の牛肉は、市販のもので、と殺後7日から15日間のものを実験のつど購入し、シチュー肉のモデルとして2cm角、厚さ2.5cmの角切り肉、すき焼きのモデルとして筋線維に直角に厚さ0.5cmに切断した薄切り肉の2種を使用した。 1.角切り肉は、水中加熱、砂糖を肉重量の10%まぶして30分間保存後に水中加熱したもので、加熱時間は30,60,90分間とした。重量はいずれも砂糖をまぶした方が大きく、水分は少なかった。砂糖の浸透で、脱水されると考えられる。硬さは、テクスチュロメーターの測定値で加熱時間が長くなるにつれていずれも低下しており、また砂糖をまぶしておいた方が60分までの加熱では値が低く、やわらかいるといえるが、90分ではむしろ硬くなっていた。 2.薄切り肉は、水中加熱と20%砂糖液中の加熱とを行い、加熱温度を、75℃、80℃、85℃にし、加熱時間を5,10,15,20分間とした。1.と同様に重量、水分、硬さの測定を行った。その結果、それぞれの処理を行った12種の試料間の比較で、いずれも重量は砂糖液中で加熱した肉の方が大きく、水分は砂糖液加熱の方が少なかった。しかし、硬さは加熱温度による違いがみられ、75℃における加熱では、20%砂糖液で加熱した方が水中よりも低く軟らかかった。80℃では、5分と10分では同様に砂糖液中加熱の方が軟らかいが、15分、20分では逆に硬くなっている。そして85℃における加熱ではいずれも砂糖液加熱が硬いことが示された。すなわち、加熱の程度が低いときは砂糖液加熱が軟らかく、このことは砂糖液中で加熱すると肉たんぱく質の変性が抑制されると考えられた。従って、短時間加熱では砂糖があると肉は軟らかいといえる。
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