免疫・アレルギーと栄養について本年度は以下のようなテーマで研究をおこなった。 研究1.自己免疫(リウマチ)と栄養 関節リウマチ(RA)の免疫・栄養療法として経口トレランスをヒトに応用する基礎研究をおこなっている。経口トレランスを効率的に誘導する方法を探るため、関節炎モデルマウスを用いてトレランス誘導に対するエストロゲンの影響について検討した。関節炎の誘導には自己抗原であるII型コラーゲンを用いて、経口トレランス誘導時にエストロゲンを同時に投与した。その結果、エストロゲン投与により腸管免疫系の機能が全身免疫系とは異なる変化を示し、そのことが経口トレランス誘導に影響を与える結果を得た。女性に多い関節リウマチにおいて経口トレランス誘導を実際の治療に応用する時には生体のホルモンバランスを考慮する必要があるという新しい知見を得た。 研究2.アレルギーと栄養 近年の脂肪酸摂取の質の変化はアレルギー発症増加の一因と考えられる。そこで卵白アルブミンを用いた経口トレランス誘導に対し、多価不飽和脂肪酸の摂取比率(n6/n3比)がどのように影響するかの検討をおこなった。n6/n3比率の異なる食餌を与えたマウスに対して卵白アルブミンによる経口トレランスの誘導と腹腔内免疫をおこない抗原特異的な抗体価やT細胞機能を評価した。その結果、食餌中のn6/n3比率の調節がIgE産生系に影響し、アレルギーの病態を変化させる可能性のあることが明らかとなった。 研究3.肥満と免疫・アレルギー 肥満者において脂肪細胞で産生されるレプチンの増加が免疫機能にどのような影響を与えるかを検討した。食餌性肥満マウスを用いてin vivoでレプチンを投与しサイトカイン産生に与える影響を検討した。その結果、肥満によりレプチンに対する感受性が低下しサイトカインバランスに影響を与え、アレルギーなどの免疫調節異常につながる可能性が明らかとなった。
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