研究概要 |
米の可食部である胚乳に含まれるセルロース,ヘミセルロース,ペクチンの食物繊維の生理効果と調理課程における食物繊維の挙動を調べ、飯の食味と食物繊維の生理作用を結びつけることを目的とする。 平成14年度は米の胚乳に含有する食物繊維の中の非水溶性食物繊維のセルロースの生理効果についてセルロース含量が異なる飼料をラットに与えて消化管内容物の物性変化,栄養素の消化吸収への影響,消化管組織への影響から調べた。その結果、セルロースは消化管内容物の粘度をあげ、脂肪吸収を抑制し、最高血糖値を小さくする効果が見られた。また、セルロースの消化管組織への影響は結腸の粘膜組織を厚くした。これは、結腸の粘膜組織におけるPCNA染色により調べた増殖細胞の割合が、セルロース摂取区がセルロース未摂取区(対象区)に比べて大きかったことが要因の一つと考えられた。 調理過程における米のペクチンの挙動をカルバゾール法により水溶性ペクチン量から調べ、細胞の構造についてはアリザリンレッド染色法による顕微鏡観察と走査電子顕微鏡から検討した。調理過程での無機質の存在は水溶性ペクチン量を不溶性ペクチンにし、細胞への水分吸収を阻害して飯の硬さを硬くすることを明らかにした。 ヘミセルロースの一つであるβ-グルカンの調理過程における変化を抗原抗体反応より調べるために、抗原となるβ-グルカンの米よりの抽出方法を確立した。これより平成15年度は抽出したβ-グルカンを用いてうさぎで抗体を作製し、調理過程における米・飯のβ-グルカン挙動を調べ、さらにβ-グルカンをラットに摂取させ、生理作用についてセルロースと同様の方法で検討していき、米・飯に含有する食物繊維(セルロース,ヘミセルロース,ペクチン)の役割を生理的,食味から総合的に考察する。
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