アスコルビン酸(AsA)のタンパク質系ゲル状食品品質改良機構には、種々の説がある。その一つにAsAの酸化中に生じるスーパーオキシドアニオンラジカル(O^-_2)が、タンパク質上のSH基からH・を引き抜き、その結果生じたチイルラジカル(S・)同士がラジカル酸化によりタンパク質間にSS架橋を形成することで、構造を密にし品質改良効果をもたらすというものがある。しかし、これはモデル実験で行われた結果より推察された機構であり、その正当性を示すためには、(O^-_2)によりタンパク質上にS・が発生することを直接的に認める必要がある。本研究は、タンパク質としてアクトミオシン・卵白アルブミン(OVA)・牛血清アルブミン(BSA)、ペプチドとしてグルテン由来のペプチド(GP-1)を用い、(O^-_2)作用によるS・の発生を電子スピン共鳴法にて検討したものである。 リボフラビンを(O^-_2)の発生源として還元型グルタチオン(GSH)に作用させると典型的なS・のシグナルが得られたが、濃度の低下により(O^-_2)のシグナルに類似した。グラムあたりSH基量が少ないアクトミオシンでは、(O^-_2)の作用により(O^-_2)のシグナルに類似したものを得た。一方、グラムあたりSH基量が豊富なOVAおよびBSAでは、(O^-_2)の作用によりS・のシグナルが得られた。これらのタンパク質はSH基を修飾するとシグナルが消えることから、アクトミオシンの場合もGSHの結果と鑑みて、そのシグナルにS・が含まれていると考えた。また、パンのドウ中においてAsAにより(O^-_2)の発生が認められた。さらに、GP-1に、(O^-_2)を作用させた結果、GP-1上にS・の発生を認めた。 以上のことは、かまぼこのみならずタンパク質系ゲル状食品のAsAによる品質改良機構は上記仮説(パンにおいては全く異なる機構が定説となっているにもかかわらず)に基づきもたらされていることを強く示唆するものである。
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