研究課題/領域番号 |
14580151
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
大杉 匡弘 武庫川女子大学, 生活環境学部・食物栄養学科, 教授 (70085231)
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研究分担者 |
岡村 徳光 武庫川女子大学短期大学部, 食生活学科, 助教授 (20211807)
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キーワード | きのこ / 担子菌 / アルコール飲料 / 機能性食品 / 線溶酵素 / 抗酸化作用 / 抗腫瘍性活性 |
研究概要 |
これまでに、きのこを用いた清酒様(原料:米)、ワイン様(原料:ブドウ)、ビール様(原料:モルツ)飲料の製造を試みてきた。しかし、嗜好の面で評価が低かったため、今回は紫イモを原料とすることで、色などの嗜好の評価を高めるとともに、きのこがもつ健康・機能性を有するアルコール飲料の製造を試みた。 蒸した紫イモ(品種:アヤムラサキ)に液体培養して得たエノキタケやマスタケの菌糸体を植菌し、21日間、25℃で繁殖させたものに、水を加えて42日間、25℃で静置または回転振とう培養を行った。糖とアルコールはHPLC、抗トロンビン活性はトロンビン時間測定法、線溶活性はフィプリン平板法、抗酸化作用はDPPHラジカル消去法などにより測定し、TNF-α及びNO産生能はそれぞれL929細胞を用いたbio-assay及びGriess試薬法により測定した。 その結果、マスタケで製造した場合は、振とう培養下でのアルコール生成が良好(2.9%)で、紫イモがもつアントシアニン系色素がそのまま発酵液に抽出され、抗酸化作用能が認められた。色は鮮やかで香りは甘く、味は柑橘系と評価され、女性に好まれる傾向にあった。この香り成分はマスタケがつくる特有のアロマで同定の結果、γ-decalactoneを主成分とするモモのアロマであった。また、マスタケのアルコール発酵液は、マクロファージによるTNF-αの産生とNOの生成が認められ、β-グルカン様多糖の生成蓄積による抗腫瘍性活性が確認された。同様にエノキタケで製造した場合(アルコール生成、2.2%)でも線溶活性、抗腫癌性活性が認められた。しかしながら、紫イモのもつ色素はみとめられず、従って抗酸化作用能はなかったことから、エノキタケの場合、色素の分解が生じたかまたは配糖体に変化したものと考えられる。マスタケおよびエノキタケについてのアルコール生成機構を検討した結果、酵母によるアルコール発酵のEmbden Meyerhof pathway及びZ菌(細菌)によるアルコール発酵のEntner Doudoroff pathwayの両経路を合わせもっていることを明らかにした。 今後、豆類や乳類を加えた各種食品素材を用いて、健康・機能性が注目されている各種きのこ(担子菌)を組み合わせてのアルコール飲料の製造とその特性を総合的に検討していくことを計画している。
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