研究概要 |
卵白リゾチーム(Ly)で感作したB10.AマウスのLy経口投与後の疲労困憊運動量は,非感作マウスに比べて有意に低下,小腸粘膜組織の損傷も認められ,感作マウスの肝臓からLyが検出された。これらの結果はB10.A-Ly系は運動誘発アナフィラキシーモデル系として優れていることを示した。 今年度は先ずアナフィラキシー症状の判定方法を検討した。Ly感作B10.Aマウスの眼窩静脈からLyを投与し,アナフィラキシー症状を評価し,直腸温,次いで回転式ケージを用いて自発運動量を測定した。血中濃度が低い場合には全くアナフィラキシー症状が発症しなかったものの,10μg以上アレルゲンが体内に進入すると,アナフィラキシー症状が発症した。血中特異IgE値とスコア,直腸温および自発運動量の間には相関性が認められなかったが,スコアと直腸温あるいは自発運動量との間には有意の相関関係が認められた。 自発運動量をアナフィラキシー症状の判定尺度として用いて,ペクチンあるいは乳酸飲料を投与した場合のアナフィラキシー症状の惹起抑制効果を検討した。Lyで感作したB10.Aマウスに飲料水として水溶性食物繊維あるいは乳酸飲料を長期間投与し続けた状態で,アレルゲンの経口投与・強制運動負荷後の24時間の自発運動量を回転ケージで測定した。対象とした水摂取群の自発運動量は無処置時の回転数に比べて46%まで低下したが,ペクチンあるいは乳酸飲料の長期摂取群はそれぞれ89および84%の低下に止まり,有意に自発運動量低下抑制効果が認められた。更に,再度同じ実験を繰り返すと水摂取群の自発運動量は25%まで低下したものの,ペクチンあるいは乳酸飲料群ではそれぞれ66あるいは82%の低下に止まった。このように,乳酸飲料やペクチンの長期摂取によってアナフィラキシー症状の惹起抑制効果が顕著に認められた。
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