研究課題
アルツハイマー型痴呆症の予防および治療に関して食事因子との関連が注目されつつある。そこで平成16年度においては、アルツハイマー型痴呆症モデルラットを用いて、脳内活性物質として注目されている一酸化窒素(NO)とコーヒー中の主要成分の同症に対する効果を検討した。スコポラミン(5mg/kg)投与により健忘症を引き起こしたラットおよび非投与ラットに対し、生体内、とくに脳における一酸化窒素(NO)レベルを上昇させるNO供与剤(sodium nitroprusside ; SNP)とコーヒー中の成分(カフェイン、トリゴネリン、クロロゲン酸)を使用して、記憶改善効果を調べた。記憶改善効果は記憶行動解析用実験装置(シャトルアボイダンスシステム)を用いた。これはブザー、ランプ点灯後、電気刺激を与え、回避、逃避する行動から学習能力を判定する機器である。結果:(1)スコポラミン非投与ラットに対し、SNP(5mM)は回避率を有意に増加した。しかし10mMで逃避率を有意に減少した。これはNOが少なくとも一時的に記憶改善効果をもたらした可能性を示唆する。ヒトに換算した場合のコーヒー5杯および10杯分投与(腹腔内)で回避率、潜時の有意な増加がみられた。しかし、とコーヒー中の成分(カフェイン、トリゴネリン、クロロゲン酸)では反応回数、回避率、逃避率に有意な差は観察されなかったため、コーヒーによる効果は、使用した以外の成分によるのか、あるいはこれらの成分の複数の相乗効果によるのか未だ不明である。(2)スコポラミン(5mg/kg)により健忘症を引き起こしたラットに対し、SNP(5mM)は回避率、総移動回数を有意に増加した。一方、スコポラミン存在下でのコーヒー投与では5杯および10杯分でもスコポラミン単独作用下と比して変化はなかった。以上より、生体内NOレベル上昇につながるSNP投与でスコポラミンの作用である多動、神経過敏による動きが抑制されたため、一時的にもアルツハイマー症状を緩和した可能性が考えられた。
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Diabetes, Nutrition and Metabolism 17
ページ: 128-138
Neurochemistry International 44
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