研究課題
基盤研究(C)
人が咀嚼する動作を模した口腔咀嚼モデル器を用い、食品からの香気成分放散挙動を検討し、合わせて人パネルを用いたデータとの比較検討を行なった。油相体積分率が0.3の粘稠性エマルションモデル試料(ミグリオル油脂、キサンタンガム、ジャガイモデンプン、ツゥエイン60を使用)を調製し、propyonaldehyde、ethyl acetate、diacetyl、2-heptanone、2-methyl-1-butanol、3-hydrocy-2-butanone、acetic acidの7種の香気成分を添加した。パネル(10名、男:女=1:1)が各試料5.0g(直前まで15℃にて保存)を口に含むと同時に口腔内蒸気補集器のマウスピースをパネルの歯と唇の問に装着し、0〜120秒間咀嚼させ、咀嚼終了時に口腔内に分泌した唾液と試料の混合物を吐き出させた。また、各香気成分をそれぞれ1%界面活性剤水溶液および油脂に溶解(20ppm)密閉後、37℃にて30分間インキュベーションし、空気相へ移行した香気成分量を測定して、空気・水間の分配係数(K_<gw>)、空気-油間の分配係数(K_<go>)、油-水間の分配係数(K_<ow>)を算出した。口腔内蒸気補集装置により測定した香気放散量はいずれの香気成分の場合も咀嚼時間に伴ってその量が増加していた。最も放散量が多かったのはdiacetylであり、次いでacetic acid、2-methyl-1-butanol、ethyl acetateと続き、残りの3-hydroxy-2-butanone、2-heptanone、propyonaldehydeの放散量は少なかった。ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(以下GC-MS)とプロトントランスファーリアクション-マススペクトロメトリー(PTR-MS)を用いてインゲンマメとダイズの香気揮発成分を分析した結果、インゲンマメとダイズのスペクトルは似ていたが、ダイズの方がスペクトルの量が大きかった。口腔咀嚼モデル器とPTR-MSを組み合わせて分析した結果、methanol(m/z33)、ethanol(m/z45)、2-propane(m/z59)、2-butanone(m/z73)の4つの化合物が両マメのヘッドスペース中に認められた。これらの香気成分のヘッドスペースでの濃度はインゲンマメとダイズとの間では大きく異なっており、methanolと2-propaneはダイズに多く認められた(P<0.05)。またこれら4化合物の口腔中での時間に伴う放散率は直線性を示していた(r=0.874〜0.992)。主成分分析の結果、metanol、2-propane、2-butanoneはダイズとの関連性が高く、一方、ethanolはインゲンマメとの関連性が高かった。また、口腔咀嚼中には、これら4化合物の比率も変化していることが認められた。
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Food Science and Technology, Research 11(印刷中)
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