研究概要 |
【目的】本研究ではブラックタイガー(Penaeus monodon)における抗菌剤のオキシテトラサイクリン(OTC)及びオキソリン酸(OA)の動態特性を明らかにする。また、これらの残留抗菌剤が加熱調理によって、どのような影響を受けるのかを調べる。本年度は、昨年タイ国にてOAをサイナス内投与及び経口投与されたブラックタイガー組織の分析及び調理操作が残留OTC及びOAに与える影響について実験を行った。 【方法】供試エビにはタイ国サムットサコーン水産研究所で飼育されたブラックタイガー(平均体重22g)を用いた。サイナス内投与:OAを0.9%NaOHに溶解後、1M HClでpH10.5に調整したOA溶液をマイクロシリンジ(27G注射針装着)によりエビ腹部サイナス内に投与した。経口投与:OAの投与量が50mg/kgとなるように餌料に混ぜ、ディスパーサーでペースト状にした後、カテーテルを用いて強制投与した。いずれも投薬後、所定時間ごとに5尾ずつ取り上げ、血リンパ,筋肉及び殻を採取し、HPLC分析に供した。得られたデータをWinNonlin ver1.1 (Scientific Consulting, Inc., USA)によりファーマコキネティック解析した。OTC及びOAが残留する組織について加熱調理(茄でる、焼く、揚げる)を行い、調理後、それらをHPLC分析に供した。 【結果】サイナス内投与におけるOAの体内動態はtwo-compartment open modelに従って解析され、得られたモデル式は、Ct=9.96exp(-0.8252t)+3.88exp(-0.0391t)であった。その分布容及びクリアランスはそれぞれ2,061mL/kg及び90.1mL/kg/hであった。一方、経口投与におけるOAの吸収・分布・排泄も速く、最高濃度、最高濃度到達時間及び消失半減期は420μg/mL、4h及び19.8hであった。また、そのバイオアベイラビリティは7.9%と算出された。加熱調理により残留OTCは筋肉で30〜60%程度消失したが、殻では20%の消失にすぎなかった。一方、残留OAは筋肉、殻とも加熱調理による消失は20〜30%であり、OTCよりも加熱調理に対して安定であった。
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