平成14年度は、イカ筋肉中ATP関連物質の消長を鮮度の指標として用い、イカの殺し方および輸送方法と温度がイカ筋肉組織の死後変化にどのような影響を与え、それがイカ肉の物理的特性とどのような関係にあるのかを検討した。 殺し方および輸送方法の違いとしては4つのパターンを検討した。すなわち、(1)生きたイカを神経切断により即殺して保存実験に供する(即殺群)、(2)活魚輸送車の水槽にて生きたまま2時間かけて輸送し、研究室にて神経切断して即殺後に保存実験に供する(活魚輸送群)、(3)生きたイカを5℃の冷蔵ボックスに入れて2時間輸送したものを保存実験に供する(冷蔵輸送群)、(4)生きたイカを氷海水中に入れて2時間輸送したものを保存実験に供する(冷海水輸送群)、とした。 殺し方と輸送方法の異なる4つの試料イカの外套膜を取り出して5℃の冷蔵庫にて24時間保存し、経時的に筋肉中ATP関連化合物の定量、物性値の測定および筋組織構造の電顕観察を行った。 その結果、即殺群と活魚輸送群のイカは冷蔵保存6時間目においても約50%のATPが残存していたのに比べて冷海水輸送群では2時間目、冷蔵輸送群では6時間目にほとんどのATPが消失していた。また、外套膜筋肉の見た目の透明度はATP残存量と符合しているように思われたが、この点については今後の検討を要すると考えられる。外套膜筋肉の形態的観察では、冷海水輸送群の筋組織に保存当初より大きな筋束間乖離が認められていた。また、レオメーターによる物性の測定においてもこのことが原因と思われる特異な破断特性が冷海水輸送群の外套膜筋肉に認められた。これまでの結果から、全般的に鮮度の保持は、即殺群、活魚輸送群で良好であり、冷蔵輸送群、冷海水輸送群がそれに次ぐようであったが、さらに検討を要する部分も残された。
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