本研究は磁場と電場を同時に観測してその周波数成分から地下構造を推定することを目指している。古墳の石室のような石造構造物は周囲に比べて高い比抵抗を示すことが予想され、地表から比抵抗コントラストをとらえることができれば石造構造物の位置を特定することも可能となる。これを実現する探査装置を作ることが本研究の目標である。 前年度は標準電波の特徴をほぼ完全に解明し、対応すべき問題点を明らかにした。本年度は実際に現場で作業する場合に必要となる周辺回路の整備と、野外観測を行った。野外観測の結果、データを取得するタイミングが重要であり、標準電波の発信形態に応じたサンプリングが必要であること、わずかな時間のずれが最終的な構造に大きく影響することも明らかになった。40kHz、60kHzの標準電波の受信に関して、広い帯域幅の観測から信号成分を分離するよりも、回路を独立に用意して観測する方が良い結果が得られることもわかった。電場成分の観測では、硫酸銅電極以外の電極(ステンレス棒、炭素棒、鉛-塩化鉛電極)を試したところ、電極の違いが結果に及ぼす影響はほとんどなく、構造に与える変化は誤差の範囲内であった。磁場成分の取得に関しては、コイルにホルマール線を巻く回数よりも、回路で増幅度を上げた方が効率的であることもわかった。 各種検討を重ねた結果として、標準電波を利用した探査装置はほぼ完成した。当初予定した簡易軽量装置よりも重く、操作に技術を要する点もあるが、ほぼ目標を達成していると言えるだろう。
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