研究概要 |
本研究は,1990年代以降に欧米諸国で行われ始めたオーセンティックアセスメント(authentic assessment)を,我が国の実情を踏まえながら,より実践的かつ臨床的に研究することを目的としている。 従来行われてきた評価は,生徒たちを分析的に見すぎており,総合的,現実的に見ることを忘れがちになっていた。また,詳細な評価目標に沿って分析するために,「評価のための評価」になってしまっている。このような問題を解消する一つの手掛かりがオーセンティックアセスメントにはある。 本年度は,理論面を中心に研究を積み重ねた。また,実践面では,中学校の選択理科の授業の中で問題解決の視点からオーセンティックアセスメントの可能性を探った。オーセンティックアセスメトで用いる課題のための一般的な基準をまとめると次の6点に集約できた。1)現実的な課題。2)判断や革新を要求する課題。3)主題の「実行」を求める課題。4)課題は,市民や個人の生活,職場の文脈などを模倣・シミュレーションしている。5)複雑な課題に対して,真に知識やスキルが使えるかを評価している。6)試行・実践・調査などの機会が準備されている。さらに,パフォーマンスや作品に磨きをかけるためのフィードバックの機会がある。以上の点をまとめると,ここでの課題は学校や教室という枠に捕らわれない課題であり,現実を反映した意味ある課題でなければならないことが確認できた。 中学生による問題解決の実践では,教師がオーセンティックアセスメントを行う上で欠かせない,生徒の学習をどう見とるか,フィードバックやフィードフォーワードをどう効果的に行うか,学習成果のパフォーマンスをいつ行わせたら良いかについて試行を試みた。これは,次年度へ発展的に継続する課題である。
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