研究概要 |
本研究は,オーセンティックアセスメント(authentic assessment)を我が国の実情を踏まえながら,より実践的かつ臨床的に研究することを目的としている。 近年の評価は結果重視から過程重視の評価へと移行している。学びの過程を評価するためには,これまでの評価の手法を単に応用するだけでは,十分に対応できない現実がある。 そこで,1990年代以降に欧米諸国で行われ始めたオーセンティックアセスメントはこの問題の解決のための一つの手がかりがあると考えた。また,従来行われているテストとは異なり,現実世界の文脈を模写した課題をオーセンティックタスクと位置づけた。 本年度は、オーセンティックタスクを用いて授業実践を行い、実践の可能性をより深く探った。ここで用いたタスク(課題)は,農作物に対して農薬を使用するか否かに関する課題である。この課題は、子どもたちに判断(トレードオフ)を求める課題であり、現実の世界を意識しながら回答を要求する課題である。本実践では,より現実に即した課題の特殊性を考慮し,中学校の選択理科で試行した。生徒たちが用いたワークシートや授業中のプロトコルデータからは,それぞれのプロセスにおける条件の下で,扱う農薬の長所や短所を総合的に判断し,意志決定を行っていることが明らかになった。特に,本実践を通して,判断の根拠を示して説得力のある文章が書けるようになった生徒が,授業を重ねる毎に増えた。 オーセンティックタスクの解決活動を通して子どもの学びを評価しようとしているのがオーセンティックアセスメントであるが,実践との接点からは、教師がオーセンティックアセスメントを行う上で欠かせない、評価結果をどうフィードバックしたら良いかについては十分に検討することができず,今後の課題として残った。
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