すでに収集されていたデータを子どもが学習内容を意味づけアプロプリエートする過程という視点から分析することを前年度に引き続いて行い、ハイブリッドの出現が他者のアイデアの経験とのタイムラグを伴って変わることが明らかにされ、Wertchのレジスタンスの考えからの検討が行われた。このことは前年度の分析結果とともに論文にまとめられInternational journal of science and Mathematics Education誌において出版される予定である。また、平成15年前半に収集されたデータについて、こうした枠組みをもとに分析を今後進める予定である。 通常の授業場面で算数・数学の学習における意味生成を考察するために、子どもがつまずきやすいとされる乗法構造に関わる学習を中心に、データの収集を大学院生とともに行った。その際には、授業全体の様子をビデオカメラで記録するとともに、抽出児童については別のビデオカメラで記録をし、授業中における活動や発話の全体をすべて記録するよう努めた。これらのデータについても、上述の枠組みを視点としながら分析を進める予定である。 さらに、子どもが意味生成をせざるを得ないような学習過程における子どもたちの学習の様子を捉えるために、5時間の授業を計画し、本学附属小学校のご厚意により平成16年2月に実際に6年生に対して授業を実施した。授業は小学校6年生を対象とし、標準的ではないが小学校の数量関係の知識で意味づけができる場面と、未習の新しい意味を生成する必要のある場面とを組みあわせた。授業に際しては、授業全体の様子を教室の前後2台のビデオカメラで記録するとともに、事前の観察をもとに抽出された5名の児童についてはその学習過程を一人1台のビデオカメラで記録した。来年度に向け、このデータについても分析を進める予定である。
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