雪の結晶は自然の美の象徴であるにも拘わらず、これまで教科書に登場することはほとんどなかった。その大きな理由の一つは、北海道や標高の高い場所は別として、降った雪がすぐ融けてしまい、観察の対象になり得なかったことである。本研究では、ドライアイスや、氷と塩を用い、顕微鏡下の必要な部分のみ冷却し、雪を冷凍保存して観察する方法(部分冷却法)を開発し、比較的気温の高い北陸地方でも十分自然雪の観察ができることを実証した。この自然雪の観察を総合学習のテーマとして取り上げる場合、どのような展開が可能か、その参考になると思われる実践的研究を行った。また、これまで、人工雪生成実験は結晶学、あるいは気象学の対象として、殆ど専門家のみによって行われていた。本研究では、氷と塩を用いて得られる低温が人工雪生成に適した温度であることに注目し、カップラーメンの容器や、魔法瓶など、身の回りの身近な道具を用いて人工雪生成実験を行い、非常に対称性のよい人工雪が比較的簡単にできることを明らかにした。この実験の中で、結晶の核生成に、静電気が大きな役割を果たす事もわかった。本研究のもう一つの目的は、この人工雪生成実験を、我が国や外国の教育現場に普及させることであった。そのために、福井市内の中学校理科の選択授業を利用して、出張実験を行った。また、大学の公開講座を利用して一般の人々にも実験を公開し、地元のテレビや新聞でその内容が詳しく報道された。さらに、14年10月には、インドネシア大学、及び全北大学(韓国)を訪問し、人工雪実験について講演および実践指導を行った。
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