研究概要 |
H15年度には,(1)大学生同士による日独遠隔協同学習の実施と分析,(2)H14年度に実施された日タイ遠隔協同学習の分析,(3)小・中一貫カリキュラム案の作成と実験授業の実施,(4)中学生を対象とした日タイ遠隔協同学習の実施と分析を行った。 (1)について:IP接続によるテレビ会議システムを使ってベルリン自由大学情報学部の数学教育専攻学生と京都教育大学数学教育専攻学生徒による共同ゼミ発表会を行った。ドイツからは情報科学の歴史について,日本からは総合演習の一環として京都で見られる数学について発表した。動機付けと積極性につながることが確認された。 (2)について:2002年11月中旬から2003年2月下旬にかけて,京都教育大学附属高校とタイ国ラジャパット総合大学アユタヤ校附属実験学校(高校)の1年生同士で,「自然と数学-フラクタル幾何-」をテーマにTV会議システムを利用した遠隔協同学習が実施された。開発された創造性テストを使って創造性態度について調べた結果,日本側は独自性と積極性が育成された。しかし,探求力,独創性を育成することは難しく,生徒自身が課題を見つけ出すような教材と授業の必要性が示唆された。タイ側は,クラスの生徒全員の創造性を育成することは難しかったが,一部の生徒の創造性が育成されたことが確認できた。この両国の差はタイ側での授業時間不足にある。また,両国での英語によるコミュニケーション能力不足が授業の理解の妨げとなった。 (3)について:代数分野と幾何分野の小・中一貫カリキュラム案を作成し実験授業を行った。小学校1年生から定規を使った直線や立体の展開図の指導ができること等が確かめられた。 (4)について:2003年9月から2004年2月にかけて,京都教育大学附属京都中学校とアユタヤ校附属実験学校(中学)の3年生同士で,「地球規模で考えよう-日時計と三角比-」をテーマに遠隔協同学習が実施された。日本側では精密性が育成され,授業場面ごとでは交信授業が通常の授業よりも創造性の育成に寄与し,特に積極性と論理性でそれが大きい。交信授業への慣れが,授業内容の理解や英語の理解につながっていくことが示唆された。タイ側についてもこの授業による教育効果が認められた。
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