研究概要 |
本研究は,宍道湖・中海という日本で稀少かつ自然豊かな汽水湖をかかえる斐伊川水系というロケーションを生かし,本水系における環境学習の可能性を探ることを通して新しい環境教育のあり方を提案しようとするものである。 水系環境を扱う際,流域とそれにかかわる事象間の相互関連性について,システム論的視点から取り上げようとした。また,環境教育においては,地球時代にふさわしい資質や能力を育成できる学習内容や方法が一人一人に保障される必要があることを提案した。即ち,(1)環境や環境問題に対する関心や感受性の育成,(2)問題の解決活動を通しての理解と追求能力の育成。(3)答えが明確でない事象や多様な価値観の違いを乗りこえ,社会的合意を得ていく方法や能力の育成,である。以上の視点を斐伊川水系に適用した教材開発を試み,システム論的環境教育のあり方について提案した。 本年度の中心的取り組みとして,湖内における物質循環に視点を置いた。ヤマトシジミの摂餌、消化及び排泄に関する器官の把握、排泄物質の解明を行い、宍道湖環境下におけるヤマトシジミの摂餌、消化及び排泄活動がもたらす物質循環における役割について研究を進めた。さらにこれらの基礎研究に基づきヤマトシジミをめぐる物質循環を捉える環境学習教材を開発し素材研究をもとに以下の視点で小学校高学年から中学校における教材の開発を行った。 (1)形態的特徴に視点をおいた教材開発 ヤマトシジミの形態的特徴を捉えるため、身体測定や解剖等による観察を提案し、分かりやすく楽しい観察活動ができるような教材開発を行った。 (2)生態的特徴に視点をおいた教材開発 ヤマトシジミをめぐる食物網を取り扱うことにより、宍道湖における物質循環がどのように行われているのかを捉える教材開発を行い、ヤマトシジミの摂餌及び排泄物の観察などを取り入れた授業書を作成した。
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