研究概要 |
授業が成功するか否かの重要な要素として,授業過程における,情動的側面と認知的側面との関係が重要であると仮定される.従来の授業研究等においては認知情報処理にのみ重点がおかれ,情動情報処理に対しての研究はあまり重視されてこなかった.しかし,上述のようなことを考えるとき,情報情動処理との関係を意識しながら,認知情報処理の効率化を考えていく必要がある. しかし,この認知情報処理と情動情報処理との関係の具体的な詳細ははっきりしていない.そこで,本研究でははじめに理系学生,文系学生の生い立ちの履歴調査をおこなった.被験者は日本人の学生等の他,広汎な普遍性あるデータを得るため,外国人特に中国人のデータも付け加えた. その結果,幼いときに野原や河原で遊ぶのが好きだったとか,生き物を飼うのが好きだったということと,生物を得意とするとか,科学分野を得意とするということには相関がないことがわかった.しかし,囲碁や将棋をよくしたという項には粘り強い思考が得意であるとか物理や数学が得意であるという項とは相関があった.このことから単に遊びに終わってしまうようなことではそれが関係しそうな分野を得意とすることとはつながっていかないが遊びの中でその分野が培われることは将来の得意分野になっていくことが仮定される. そこで,情動的側面つまり脳部位では扁桃体活性と認知的側面での効率化が関係するかどうかをfMRIを使って調べた.その結果,扁桃体活性が認知的側面の効率化を高めることが実証的に示された.このことは上記履歴調査と併せ,授業設計の基本原理になりうるものと考えられる. このことから,具体的教材として,動画立体映像による教材開発の有効性が考えられ,いくつかの教材開発をおこなった.特に,立体バーチャル空間の中で,自動車を運転し,危険な事象等を疑似体験させることにより,交通リテラシを体で体得していく教材を開発し,その有効性が実感できた.
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