「自然に親しむ保育」で幼児に育つと思われる力について、幼児の発達する姿を「具体的な活動や様子」として表した評程基準案を設定した。そして、北海道、東京、福岡、沖縄の幼稚園、保育所の保育者145人とともにその項目が妥当かどうかの検討を行った。結果、7のカテゴリー(1)自然にかかわろうとする意欲や態度(2)五感を十分使う、豊かな感性(3)好奇心、探究心(4)遊びの創造力、想像力(5)命の尊重、生き物への愛護(6)身体的発達(7)精神的発達、思いやり、協調性など、そして、37項目の評定基準が設定できた。今回の評定基準を用いて幼児一人一人の行動評価を行い、自然環境の実態や保育実践の程度、年齢(3・4・5歳児)や集団保育の経験年数などの要因との関係や基準の有効性を検討しているところである。身につけてほしい「育つ力」が「幼児の活動や様子」として具体的に示されることは、発達の方向目標がより明確になるという意味において有用であり、また、実証的に検討することで「自然とかかわる」ことの意義が再確認され、保育の場での充実が期待できる。さらに、保育者養成教育での指導内容が、保育者の指導技術のベースになると思われるため、養成教育の実態について調査した。回答した教員のほとんどが幼児期に自然にかかわることは重要で学生への環境教育も必要であると強く感じている。しかし、学生は実際に動物、植物、土などに触ることは好きではなく、学内・外での自然体験は実施が困難であることがわかった。中心となる教科である保育内容環境は自然だけではなく、また、半期1コマという時間的な制約、自然という教材そのものが机上での教育方法になじみにくい、農地や観察・採集のための自然環境などが少ないといった「実施を困難にする要因」が多く、授業の工夫や養成校教員の情報交換や共有化の必要性、現職保育者への再教育の充実などが必要であることがわかった。
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