研究課題
幼稚園・保育所で「自然にかかわる保育」を十分実施することは、幼児の心身の発達や命の教育、環境教育としての意義が認められる。このことを実証的に示すために、前年度より教育効果を数量的・経年的に捉えることを試みている。「身体調整能力」「身体機能・運動能力」「精神的発達」「人間関係・道徳性」「表現力・言葉」「自然にかかわろうとする意欲や態度」「五感を十分使う・豊かな感性」「知的好奇心・探究心」「遊びの創造性・想像力」「命の尊重・生き物への愛護」の全10カテゴリー、54項目の幼児の発達全般にわたる汎用評定基準を作成した。この汎用評定基準を用いて保育所3園、幼稚園5園の計8園、2005年3月の時点での3歳児(216人)・4歳児(320人)・5歳児(309人)クラスを対象として調査した。男女の別、集団保育の経験(月数)、生活環境の違い、家族構成なども記入してもらった。「自然にかかわる保育」に意識的に力を入れている場合は、やや「育つ力」全般に良い得点が得られることがわかり、幼児の発達が促される可能性があることを実証的に示すことができた。また、若干男子のほうが積極的に自然にかかわる傾向にあり、集団保育経験の長さは「育つ力」の得点を上げる要因となり得ることなどがわかった。幼児期の環境教育は「自然への感性を育てる」といった根源的なものを第一に考え、また、発達の特徴から考える力などの人としての生きる力そのものを十分育てるといった視点が必要である。しかしながら、今回の汎用評定基準では「知的好奇心や探究心」の得点が全般に低く、項目設定の改善、もしくは発達を促すための保育のあり方の検討が必要であることがわかった。今後、評定基準の結果と具体的保育内容との要因分析を行って、自然に親しむ保育を中心にした環境教育の実践内容の具体的提案を行いたい。
すべて 2006 2005
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環境教育 第15巻1号
ページ: 11-20
乳幼児教育学研究 第14号
ページ: 53-65
日本環境教育学会第16回大会研究発表要旨集
ページ: 90