研究概要 |
わが国における留学生教育は,留学生に対して1990年代より語学教育および専門基礎教育を支援してきている.これは,主として留学生センターなどの機関が,一般語学や生活用語学の収得支援をするための一般語学教育を提供する傍ら,出身国におけるカリキュラムの違いや,修学上必要なる専門分野の基礎教育が語学的障害により学習が困難な留学生に対して専門的にも語学的にも修学を支援する目的で行われている.しかし,一般語学教育と専門語学教育において扱える内容には大きな隔たりがあり,また,大学院留学生の場合,研究論文執筆に必要な筆記能力や研究交流に必要な弁論能力に見合った充分な教育内容が準備されている情況ではない. この問題を解析するべく本調査研究では、自然科学分野における基本である数理教育に焦点を絞り、これらの教育内容や語学教育についての国別差異を調査し,日本の大学に留学生が入学する際の修学を支援するため,日本,中国,韓国,台湾,インドネシア,ブルガリア,メキシコ,オーストラリア,アメリカの地域における中学校および高校担当の教科書をカリキュラム概要について調査を行った。 調査の結果,各国における数学および理科の分野における教科教育の内容については,それほど差異がないものの,大学入学前までのカリキュラムの差,即ち,選択した科目による違いが要因になることが判明した.ちなみに,これは日本の学生においても例外ではない.また,語学面における調査の結果,一般語学と専門語学の間をリンクする教育内容は無く,この分野の先行研究では,語彙の説明をする専門用語辞典の整備が行われていることがわかった.このため,留学生は,専門用語の用途事例や用語の使いまわし方法を学ぶ機会が無く,専門語学に関する教育内容の整備が必要であることがわかった. 本調査研究では,留学生が自国で高校卒業程度の数理知識を身に付けていることを想定して,目的言語における用途事例や表現方法について参照学習を行えるようなデータベースを日本語,英語,中国語,韓国語の4カ国語で構築することで,これらの言語観における専門基礎教育についての自主学習が行えるようなWeb学習環境の構築を考案した.
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