本研究の第一の目的は、言語学習における教授ツールとしてのポートフォリオの有効性を明らかにすることである。研究初年度にあたる平成14年度には、ポートフォリオに関する国内外の先行研究を概観した。この過程で、言語学習のうち、特に国語に焦点を当て、「第一言語(国語)教育のライテイングにおけるポートフォリオについて」を執筆した。 英語科については、平成14年度の1学期間に英語のライティングにおけるポートフォリオを用いた授業実施のため、ガイドラインの設計・明示が不可欠であることから、その設計を目的とする資料を得るため、調査研究を行った。その結果、これまでの先行研究から重要な要因であると指摘されていた性差は、日本人中学生の場合あまり影響力がなく、英語力(この場合はライティング力)の違いが影響が大きいことが明らかになった。 加えて、平成14年度の2学期には、看護学校2年生を対象に英語の表現力(ライティング、スピーチ)を題材として、ポートフォリオを用いた学習を実施した。また、群馬県の公立中学校において国語科における教授ツールとしてのポートフォリオの実験を計画し、平成14年度2〜3学期に中学2年生を対象に実験を実施した。以上の2つの研究成果は平成15年度に発表する予定である。 さらに、言語学習以外の分野でもポートフォリオを活用した学習の実施が可能であったので、次の実験を実施した。(1)大学1年生を対象とした教育関係の内容のポートフォリオ、(2)中学校社会科(地理)、(3)中学校英語科(ライティング)、(4)中学校道徳である。以上の研究成果についても平成15年度中に発表する予定である。 以上の研究について、これからデータの分析を行うものも多いが、質的データあるいは実験協力者の観察によると、ポートフォリオを教授ツールとして活用した学習は、学習者に大変好意的に捉えられている傾向があることが報告されている。
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