本研究の目的は言語学習における自律学習を目指す教授ツールとしてのポートフォリオの効果を明らかにすることであった。昨年度までの研究において本研究が対象とした国語・英語の言語学習の両分野において、教授ツールとしてのポートフォリオが学習者の自律学習態度を養成する上で効果があることが明らかになった。そこで、最終年度に当たる平成16年度は、ポートフォリオの効果をより一層高めると予測される要因について研究を進めた。これまで学習者・教員の両者にとってポートフォリオ作成の手間がかかりすぎることが欠点であり、その汎用化を妨げていると指摘されていることから、この欠点を克服し、ポートフォリオがより広く受け入れられることを目指し、まずポートフォリオの書式の簡略化について研究を行った。まず、その基礎データとして、現職教員や大学院生を対象に、ポートフォリオの簡略化を含め、ポートフォリオが現職教員やこれから教員になろうとしている学生にどのくらい浸透しているのかを調査した。その結果、ポートフォリオについて詳しい知識があるとはいえないものの、現職教員はポートフォリオについてある程度の知識があること、現職教員・学生共に簡略化されたポートフォリオ開発に対する希望があることが確認された。そこで、ポートフォリオ作成過程で不可欠の一要素であるカンファレンスに特に注目し、その必要書式(カンファレンス・シート、リフレクション。シート)を簡略化し、看護学校1年生(eメール・ライティング)、2年生(英語表現:作文+スピーチ)を対象にポートフォリオ作成の実験を行った。その結果は両者において簡略化しない場合に比べて遜色のないものであり、今回の研究で取り上げた簡略化は効果があったといえる。さらに、前者においてポートフォリオが英語のライティング学習への動機づけを向上させたり、不安を軽減する上で効果的であるのかどうかについて併せて検討したが、両者においても効果があることも検証された。
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