研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、言語学習(国語・英語)における教授ツールとしてのポートフォリオの有効性を明らかにすることであった。中学生を対象とした国語、中学生、看護学生を対象とした英語における実験の結果、国語・英語のどちらの教科においてもポートフォリオを活用した学習は学習者に大変好意的に受け止められ、自律学習への態度が養成されることもわかり、ポートフォリオが教授ツールとして有効であることが明らかになった。また、ポートフォリオ作成過程で実施されるカンファレンス(グループ型、全体型)が特に学習過程におけるスキャフォールディング(足場掛け)として有効なこともわかった。ただし、グループ分けをして学習を進める場合、学習者特性(学習スタイル、動機づけ、性格特性)は特に考慮する必要はないが、英語力はグループ分けの際に考慮する必要があり、英語力の異なる学習者を組み合わせてグループを作る必要があることも明らかになった。さらに、先行研究においても指摘がなされているように、教師・学習者のどちらにとっても、ポートフォリオ作成の手間がかかりすぎることが問題として浮かび上がったため、現職教員やこれから教員になろうとしている大学院生に対してポートフォリオそのものや、その作成の手間についてどのように意識しているかについて改めて調査を実施することにした。調査の結果、現職教員はポートフォリオについてある程度知識があることや、この現職教員ばかりでなくポートフォリオについての知識がほとんどない大学院生でもポートフォリオの作成の手間が省ける簡略化したポートフォリオの開発を望んでいることも明らかになった。そこで、それまでの先の実験で特にポートフォリオの不可欠でありかつ有効な要素であるカンファレンスに注目し、その必要な書式(カンファレンス・シート、カンファレンス・リフレクション・シート)を簡略化した。またポートフォリオを用いた学習期間も可能な限り削減した。以上の条件の下で、看護学生を対象に実験を実施したが、その結果、簡略化しないポートフォリオを活用した場合と比較して、その効果や自律学習への態度養成において有意な差が無く、本研究において考案・実施した簡略化ポートフォリオはその有効性においてほぼ同様の結果が得られることから、教授ツールとして有効であることがわかった。
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上越教育大学研究紀要 24(2)(印刷中)
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