脳性マヒに代表される重度肢体不自由児・者は可動域や手指の巧緻性の制限を受けており、書字、音声表出などによるコミュニケーションが不自由である。しかし市販のコンピュータのポインティングデバイスとエミュレーションするためのインターフェースの開発により、言語的・非言語的なコミュニケーションを支援することが可能となる。 研究第1年度では四肢麻痺肢体不自由者2名を対象として、「非接触型カードマウス」の開発を行った。「非接触型」のポインティングデバイスを開発することにより、ポインティングデバイス操作時の荷重負荷を軽減すること、及び広範囲の残存動作系利用を可能とするためである。 開発されたインターフェースは専用タグを被験者の可動部に貼り付け、近傍に専用マウスパッドを設置して、タグが移動した範囲を、専用マウスパッドに埋め込まれたマトリックス状に配列したセンサーが感知してCPUがXY座標軸上の位置を計算するものである。機器構成は125Khz系IDタグリードシステム、PS/2マウスコントローラーシステム、タグリードアンテナアレー、専用タグカードからなる。これにより、障害者の微細な運動によってPS/2マウスエミュレーションが可能となり、重度の身体障害者がマウス操作に類似したコンピュータ操作を行うことが可能となった。 この機器を用いて、大津市成人障害者施設へ通所する2名の脳性麻痺成人が長期にパソコンを使用することを目的として、現在、機器性能評価のための基礎データ取得と、応用ソフト(メールソフトなど)の使用時における諸問題を定量的に把握する実証が行われている。
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