重度肢体不自由児・者にとって最近のGUI環境の進化は自立生活の大きな支援となっているが、その場合入力インターフェイスとなるポインティングデバイスの操作性の改善は決定的な重要性をもつ。四肢麻痺をはじめとした重度障害では精密な2次元ポインティングによるマウスカーソル操作が不可能である。その際、随意動作可能な身体部位が任意の場所であっても入力できること、姿勢保持をしながらも過重な負荷をかけずに入力できることなどが求められる。このため本研究では第1にRFID方式による「1入力オートスキャン型非接触スイッチ」を開発した。このシステムは専用タグ(送信器)を被験者の可動部に貼り付け、近傍に専用アンテナ(受信器)を設置して、タグが移動した場合にセンサーが感知して入力情報とするものである。これを利用しマウスカーソルを任意の位置にポインティングさせたいとき、画面四方に置かれたLEDの発光(またはカーソル方向の回転)に対応してon/off入力すればこれによりカーソルが自動的に進行し、または停止、もしくは(ダブル)クリック入力する方式で1入力という制約の下でGUI環境でのマウスエミュレーションを実現した。またこのスイッチによる実測評価ソフトを開発し、計測評価を行った。第2の研究開発はこのシステムを用いて障害者の環境制御を統合的に行うものである。すなわち赤外線コード用いて制御信号を学習させ、PC環境下で赤外線コード送出を行うことによりCRT画面上から選択すれば周囲にある環境(家電制御やPC上のアプリケーション操作)をon/offの2値入力で制御可能となった。これを利用しやすくするため、Webデザイン形式のソフトを開発し、1つのソフト上からで利用者が予め制御コードを学習させておけば身の回りの赤外線制御機器やアプリケーションをページ切り替えによって操作できるようになった。本研究では健常者による機器性能評価は行われたが、脳性麻痺成人を対象とした評価は実施上の困難が累積したため今後の課題として残された。
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