平成16年度で、以下の6点で研究を展開した。1.各発達段階にある教員を対象にした縦断的な児童生徒認知調査を展開し、教員の個人内比較に注目した学級把握スタイルの変容の記述を蓄積する。2.学級把握スタイルの同一学級における年内変動パターンを比較検討する。3.変動パターンの評価基準を整備する。4.評価結果の各教員へのフィードバックシステムを構築する。5.調査システムを利用した教員支援の効果について、面談調査による追跡を行う。6.成果を海外で発表する。7.研究成果を報告書にまとめる。 1.では平成11年度から継続性を保ちつつ調査を重ね、一部調査地域の自然災害の影響で調査実施の叶わなかった部分があるものの、教員の変容記述の蓄積を継続者数として実人数6人、調査実施のべ人数として34人実施・蓄積できた。2.年内変動パターンの比較を行い、今回において特に教員自身の自己イメージとの発達と児童生徒との相性認知の適応との関係を検討した。3.として、教師内地位指数の分布型の情報のみならず教員の自己イメージとの関連の変動を含めることが有用であると明らかにした。4.については、前項3までの知見をフィードバック内容により多く含める枠組を考案し、全ての調査について面談もしくは郵送(書面)のフィードバックを実施した。この面談調査において、特に教員の認知の変容が学級環境の変化の認知としてまず把握される様相が示唆された。5.について、追跡的な面談調査の可能な2教員について調査を実施した。その結果として、教員の認知効果のプロセスを追うには、学級環境もしくは学級風土の変容を研究内変数として組み込む必要性の示唆を得た。6.として、8月に中華人民共和国・北京で開催された国際会議ICP(International Congress of Psychology)で縦断調査の事例を発表した。7.として、補助金の交付を受けた3年間の研究成果を児童生徒認知調査の活用の観点と、それが学級に効果をもたらす過程で重要な変数と考えられた学級環境の観点と、両観点の研究の総合として報告書としてまとめた。報告書を冊子として製本した。
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