インターネットを用いた遠隔教育のデモンストレーションとして、沖縄県立看護大学の学部学生を対象に「地域保健活動のための疫学(日本公衆衛生協会)」に関する遠隔講義を実施した。学生評価では、文字サイズ、補足説明用のリンク画面、専門用語に対する注釈、図・表の増加など、講義素材の加工に関する意見が数多く出された。これらの指摘を有効活用するために、現役保健師と共同で、遠隔教育用コンテンツの開発に着手した。また、離島の県立病院院長を対象に危機管理とメディアについてケースインタビューを行った。一方、ケースメソッドの評価の場として、日本公衆衛生学会の自由集会を利用した。その結果、保健職者のジレンマを保健活動記録とするケースメソッドの応用が示唆された。保健師の定着率の低い離島・へき地においては、ジレンマの質の評価は保健活動の継続性、保健活動の質向上という面で重要な課題である。昨年度に引き続き本年度は、ラオス国の助産師を対象にケースメソッド研修を実施した。その際、研修模様をビデオに収め、ケース討議の質を分析した。その結果、通訳を介しての討議には、通訳の個人的見解が影響している可能性が示唆された。次回からは参加者からケース講師役を選定し、参加者の母国語で討議を展開する必要がある。また、ケースメソッドによる本研究の内容を第17回太平洋看護研究会議(ホノルル市)にて口頭発表した際、ハワイ大学の遠隔看護研究者から英語版ケース教材使用の申し込みがあった。なお、保健専門職者において、グラウンテッド・セオリーやフォーカス・グループインタビューなど質的研究に対する学習ニードが高いため、質的研究の看護学領域への展開について社会調査方法論の視点から系統的に文献レビューを行った。
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