本研究の研究目標は、コンピュータシミュレーションを利用した教授・学習の場で、学習者が「自ら問題を発見し解決する」能力を育てる有効な設計指針を明らかにすることである。研究方法は、開発したシミュレーションによる実験において実験結果と学習者の内的過程を総合して調査することから目標を効果的に達成するうえの必要な条件を探ることにした。 1)効果的な教授・学習を設計する指針を得るためのプロトコルの収集については、実験後にシミュレーションを操作した履歴を基にした簡易入力システムを使って学習者の思考過程をコンピュータ処理可能な形式で収集することを計画した。その分析より学習者が陥りやすい問題点に絞ってフィードバックするのが効果的であると推定できたたため新たにフィードバックシステムを設計・開発し、シミュレーションと組み合わせて実践したところ予想以上の効果をあげていた。 2)学習者の内的過程を推測するために順序付けたプロトコルの収集を試行した。その分析より指導者の思考モデルに注目してプロトコルを作成し、参照モデルと学習者のモデルのずれに注目するにより学習者の変容を比較的容易に可視化できるのではないかいう方針で実践した。小規模な試行ではある程度の手ごたえが見られる。 以上のように学習者自らが問題解決をする能力を育てる有効な設計指針を明らかにするためのいくつかの示唆をえることができた。さらにシミュレーションを使用しても教育目標への到達が容易でない学習者は残り、教師による指導の内容・時期等に関する示唆も得られた。
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