1.視覚障害者の作画アプローチの分析を行った。結果、全盲者は文字情報によるツリー構造などの論理的構造の把握は得意であるが、平面的(2次元の)図形の配置や相互関係の把握には困難があった。したがって座標値(絶対・相対)をできるだけ使わないで、論理的記述(言語など)による平面構造、階層構造を用いて図形の記述や変更追加ができるようにして、晴眼者と同じような図形を作画可能とすることにした。2.図形記述言語体系の研究と設計を行った。結果、基本作画機能の設計を行い、図形記述言語の機能、図形記述の制御、文字制御、図形記述言語システムの開発をXML言語体系に基づいて作画命令や自動レイアウト機能などの開発を行うことにした。3.触覚による図形提示装置(AUV3000R)を購入、動作確認と基本機能調査を行った。これは68x48ドットのピンディスプレイであるが、現状ではもっとも安価で分解能が高く、C/P比の高い製品である。細かい図形の提示及びリアルタイム性には困難性が認められたが、これは提示図形の階層化をソフトウエア機能で補うことにより解決できる可能性が予測された。4.図形記述言語から中間言語SVG(Scalable Vector Graphics)形式への変換プロセッサの調査検討を行った。図形記述言語で記述された図形ファイルの中間図形ファイル(座標表現指向:SVG)への変換を行うことがポータビリティの上で望ましいことがわかった。すなわちSVG形式を使う理由は、それがXML形式に準拠しているため、人間にも機械にも視覚障害者にもreadableであること、晴眼者図形作画ソフトの標準サポート形式として広く普及しつつあること、周辺ソフトが今後多く開発され将来性があること、ベクター形式の記述であるため拡大縮小の影響が少ないこと、などが大きな利点であることを明確化できた。
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