研究概要 |
視覚障害者の能動的作画アプローチの研究開発および実装と実験評価を行った。14年度の分析で判明した、「全盲者は文字情報によるツリー構造などの論理的構造の把握は得意であるが平面的(2次元の)図形のリジッドな配置や相互関係の把握には困難がある。」との結果を踏まえて、座標値(絶対・相対)をできるだけ使わないで、論理的記述(言語命令など)による平面構造、階層構造を用いて図形の記述や変更追加ができるタートルグラフィックを導入し、晴眼者と同じような図形を作画できることを狙った。試作プログラム「turtle」では、音声ガイドを充実した結果、全盲者が自力で様々な幾何学的な図形を描けることが明らかになった。またTurtleの作画結果やデジカメ画像のフィードバック確認を可能とするために(試作段階の)触覚による図形ピンディスプレイ装置(ユニプラン社製AUV3000R)を導入、動作確認と基本機能調査を行った。これは68x48ドットのピンディスプレイであるが、現状ではもっとも安価で分解能が高く、C/P比の高い製品である。細かい図形の提示及びリアルタイム性には困難性が認められたが、提示図形の階層化をソフトウエア機能で補うことにより解決できる可能性が予測された。試作したプログラム「bmp2dot」では作画図形や画像の能動的な触知確認を促進するために、ビットマップ形式の画像から最終的な2値触知画像形式に変換するための画像処理メニューを設け、さらに音声ガイドを充実することによって、全盲者が自力で操作,利用できることを確認評価した。最後に、触覚を使った遊びを通しての触図把握、すなわち2次元空間の構造認知の訓練を行う目的で、迷路遊び(試作プログラム名「maze」)を制作して、実験評価を行った。本プログラムにおいても、全盲者が自力で迷路作成からアウトプットの入手までを行えるように音声ガイドを充実させた。自ら3ランクの難度を選択でき、発見経路を自らレーズライタで再現記述することによって晴眼者とのコミュニケーションも可能となった。
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