研究概要 |
幕末、明治初期に移入された科学書およびその中の実験教材が、18世紀のニュートニアンたちによるもの、および18世紀末、19世紀初期にそれらの科学を受け継いで産業に適用しようとした人々になるものも含まれていたでことを、1.それらの活動をした科学者たちから跡づけることができた。さらに、2.アトウッド・マシーンの日本における受容過程をとおしても、事例的・具体的に追跡することができた。 1 ニュートニアンたちの諸活動と実験 (1)17世紀、18世紀のロイヤル・ソサイエティーの実験主任、ロバート・フックおよびJ.T.デザギュリエの科学活動とその受容史から明らかにした。 (2)その弟子たちに、スウェーデンのモルテン・トゥリーヴァルド、オランダのス・グラーフェザンデ、ミュッセンブルック兄弟、アイルランド、フランスを含む各地を巡回して科学の講座をひらいたディメインブレイの活動を追跡して論じた。 (3)ニュートニアンによる科学の啓蒙活動がイギリス産業革命、ロイヤル・インスティテューションにおける科学講演に受け継がれていることを明らかにした。 (4)これらの成果を『理科教室』誌上に報告することができた。(2003.9.1--2004.3.1,2004.5.1,8回掲載) 2 アトウッド・マシーンの受容史 アトウッド・マシーンは,ニュートンの力学を啓蒙する目的で作られた実験機器で、その理念、製造者ともに18世紀ニュートニアンの科学機器を受け継ぐものであることを明らかにした上で、わが国での受容過程を追跡した。そして,わが国では、あくまでも便利な教育用機器としてしか位置づけられおらず、教育課程の変動とともにすぐに消えることになったことを明らかにした。その成果を、米国ニューポート・ニュースで開かれた、第22回国際科学機器シンポジウム(SICXXII--Scientific Instrument Symposium, Newport News, USA, 9.30--10.4,2003)で報告することができた。
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