研究概要 |
幕末日本に移入された物理学書に掲載されている(演示)実験の多くが,J.T.デザギュリエとその弟子たちによつて考案されたものであることが明らかにできた。また,明治初期の科学教科書では,それらの実験がイギリス,アメリカで継承されていたものが再移入されていることも,いくつかの具体的な実験教材の追跡によって明らかにすることができた。 とくに本研究でまったく新たに追跡したことは,王立(王認)研究所の一般講義とクリスマス講演の開始者たち,つまりトマス・ガーネットとマイケル・ファラデーの講義内容,経歴を検討して,ニュートニアンの粒子論的な物質観にたった科学とその応用を普及していたことを明らかにし,それが,明治初期の教育博物館,文部省のリーダーたちによって,わが国の科学教育に反映されたことを追跡したことである。 その成果は,つぎの永川による著書のかなりの章に反映することができた。 永田英治『たのしい講座を開いた科学者たち-科学と科学教育の源流-(Scientists who delivered entertaining lectures with scientific instruments)』星の環会,全285頁(2004.12) 章題目-「望遠鏡による星界の発見から顕微鏡による微小世界の発見へ/たのしい実験を学会で見せたロバート・フック/学会の権威ニュートンとたのしい実験を見せたホークスビー/有料の科学の講座で大成功した、学会の実験主任J.T.デザギュリエ/科学の講座を開き、スウェーデン科学アカデミーを創設した技術者トゥリーヴァルド/ス・グラーフェザンデとライデン大学のたのしい講義/ペトルス・ファン・ミュッセンブルックが広めた実験と研究/巡回講師の出現、オランダの衰退と科学の講座/蒸気機関と科学のサークル/フランスでのたのしい科学の講座と気球の開発/王認研究所の科学の講座/たのしい科学の日本への移入、その序章」
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