子どもの言語認識の形成に及ぼす言語環境について、児童・生徒を対象にした調査と、小・中学校の教師を対象とした調査を行い、その実態と問題点、今後の国語科教育における課題を明確にした。 小・中学生4351名を対象に、「家族・教師・友だちに言われて嬉しかったことば・嫌だったことば」・「言語環境に対する要望」・「テレビや漫画などのことばの使用」・「自分の発話行為の問題」など10項目について、自由記述による調査を行った。その結果、言語環境によって嬉しいことばと嫌なことばの傾向が異なっていることや、発話行為をめぐる意識に男女の違いが大きいこと、言語の伝達機能に偏りすぎていて「個体形成機能」についての意識が弱い国語科教育の問題などが浮かび上がった。 また、小・中学校教師242名を対象に、「言語環境としての自己の発話行為について注意していること」・「教室の言語環境について心がけていること」・「児童・生徒の発話行為の問題点」など10項目について調査した。その結果、小学校教師と中学校教師の意識の違いが明確になった。小学校の教師は児童理解を中心に児童との対話を心がけ、中学校の教師は教育内容が理解されることを第一に自己の発話を心がけていた。また、教師が指摘した児童・生徒の発話行為の問題点は、ことばを家庭における「室内語」として習得してきたための当然の結果の問題であることを確認し、国語科教育の課題を明らかにした。
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