本研究の主目的は、学校での家庭科学習と家庭生活での実践をいかに結びつけるかを検討することであるが、3カ年計画における2年目の研究においては、日本の児童・生徒の家庭生活実態を他国の児童・生徒と比較することで、日本の問題点及び課題を明らかにすることを試みた。本調査では、2001年に日本家庭科教育学会が全国規模で実施した家庭生活調査と同じ質問紙を用いて、隣国中国の児童・生徒との比較検討を行った。 1、中国の児童・生徒を対象とした調査概要 調査は2003年7月、福島大学の留学生を通じて、北京及び上海の公立小・中・高校の児童・生徒349名を対象に郵送による自記式質問紙調査を行った。児童・生徒の内訳は、小3-102名、小6-44名、中1-82名、高1-67名、高2-54名である。日本との比較に際しては、中国の5つの学年を、小段階(小3-102名)、中段階(小6及び中1-126名)、高段階(高1及び高2-121名)に分類して、小-中-高の変化の仕方を検討した。 2、主な知見 (1)食生活及び衣生活の実践状況において、日本は中学生の実践率が低いこと、また、男女差の大きいことが特徴として見いだされた。 (2)日本の中学生と中国の中段階の児童・生徒との意識面における比較の結果、もっと上手になりたいこととして、日本は自分のためになることが多くあげられたのに対し、中国では家族のためになることが多くあげられた。また、生活の中で大切にしたいこととして、日本は「お金」や「時間」が多かったのに対し、中国は「自分で物事を決める」や「目標を立てる」など、自分の自律に関わる事項への意識が高く表れた。以上より、日本の児童・生徒の自律意識及び家族の一員としての意識の乏しいことが見いだされた。
|