研究概要 |
本研究は,注意欠陥/多動性障害(以下,AD/HD)のある児童生徒にとって,読字行動や書字行動の獲得過程が,彼らの自己評価,特に自己嫌悪感にどのような影響を及ぼすか,その関連について検討することを企図している。平成14年度は,(1)ADHDのある児童生徒が使用可能な自己嫌悪感尺度の作成,(2)ADHDのある児童生徒における読字行動および書字行動の獲得を支援するソフトの改良とそれに基づく予備的研究の実施を目的として研究を進めた。 (1)については,関連学会や研究会への出席,文献検討,専門的知識の提供を通して情報収集をし,自己嫌悪感尺度を作成するための検討を行った。平成15年度は,平成14年度に得られた検討結果を再整理し,ADHDのある児童生徒が使用可能な尺度の作成を目指す。 (2)に関しては,書字行動の獲得を支援するソフト開発に時間を要したが一応の完成を見,予備的実験を開始することができた。ソフトを活用して構成見本合わせ法を実施することにより,漢字の書字に困難を示していたADHDのある児童に書字行動の向上が見られた。次年度以降は,さらに実験研究が進められるよう準備をしていく。なお,調査および読字・書字行動の獲得に関する実験の実施にあたっては,研究の趣旨に賛同し,被験者および保護者から同意を得られた場合に実施するようにする。特に,後者においては被験者の実態に応じた学業スキルの向上を目指し,研究協力者に不快な思いや過剰な負担をさせないようにする。得られた記録等は,研究代表者が責任を特って保管し,個人が特定されたりプライバシーが流失しないよう従来通り配慮する。
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