研究概要 |
本研究は,国内の多文化化・価値の多様化の進展に伴う教育の課題に応えるために,多文化主義(Multiculturalism)を前提とする教育のあり方を考える基礎的研究である。それゆえ,昨年度に引き続いて,多文化教育の先進国であるアメリカ合衆国とイギリスにおける多来化教育論と「多様性」・「公共性」の両者に尊重した教育実践(カリキュラムや教科書等め教材を含む)の比較検討を通して,日本における多文化共生社会の教育のあり方について考察を行った。本年度は3年度の中間年度にあたり,資料収集の継続・資料の更なる分析及び検討を行った。具体的には,本年度の研究として,主に以下の四つの研究活動を行った。 (1)昨年度収集したアメリカ・イギリスで開発・実践されている「多文化教育」カリキュラムの分析を行った。また,アメリカ合衆国におけるサービス・ラーニングを,子どもの社会参加への支援の観点から考察し,日本の社会系教科・総合学習への応用可能性について検討した。 (2)「多文化教育」カリキュラムの収集を継続して行うため,アメリカ合衆国のワシントン州,カリフォルニア州,アリゾナ州,ニューメキシコ州,コロラド州に赴き,社会科教育担当者及びカリキュラム開発担当者への意見聴取を行った。 (3)多文化共生社会に対応した教育の実現のために教師の多文化的資質の育成が重要であるとの観点から,ワークショップ型の教員養成大学教員養成・研修プログラムのあり方を検討した。 (4)言語教育に関しては,全国大学国語教育学会第105会大会のシンポジウム:「地域から照射することばの教育」にて,多言語・多文化社会を展望した国語教育のあり方について発表し,「公共性をどこに求めるかが多様性を認める議論になる」ことを明らかにした。
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