研究概要 |
学習障害児の算数障害に対する学習支援の必要が指摘されてきた。教育プログラムの作成においては,有効な診断方法の確立が必要である。この点について,充分な検討はなされていない。算数では,特に,問題文を理解する上で,聞く、読むに加えて,計算に関する知識の記憶,作業記憶などが不可欠である。そのため,認知能力の偏りと,算数障害のと関係について、検討を行うことが必要である。 本年度においては,以下の点で検討を行った。 (1)はじめに、学習障害児の算数障害の発達アセスメント課題(平成14年度作成)を30名の学習障害児に実施した。あわせて、読書能力検査課題を実施した。その結果,特に、文章問題の解決が困難な子どもの中に,読書能力が著しく劣る子どもがいることが明らかとなった。一方,読書能力が良好であっても,文章問題の解決が困難な子どもを明らかにすることができた。 (2)読書能力が劣る子どもについて,文章問題の文章理解を中心とした援助課題を,3段階設定した。特に、対象児を状況理解の中心とした課題にすることによって,文章問題の解決が改善された。このことから,文章問題の援助課題を構成する上で,状況理解の援助を中心とした課題が有効になることが明らかとなり,平成16年度研究課題の基礎データとなる。 (3)作業記憶の生理心理学的評価を行うために,NIRS法を用いて,脳血流量の測定を行なった。測定箇所は,下前頭回,中前頭回,上前頭回について検討した。作業記憶において言語情報を維持している時に特徴的な応答計かを観察できた。この応答特徴は,学習障害児の作業記憶の評価に有効であることが推測された。
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