研究概要 |
知的機能,視覚機能,運動機能などにつまずきのある児童の中には,およその字形は表現できるものの,必ずしも正しい字形で文字を書くことができない子どもたちが少なからず存在している。そこで,これらの問題を抱える子どもたちに適応可能な書字指導プログラムの作成を目指して,書字行為における発達的諸特性に関する基礎的研究を実施した。 本研究期間内では,次のような成果を得た。 1)27名の子どもを対象として,幼稚園年長と小学1年の各年度末に平仮名書字の状態を記録したデータの分析を行った。その誤字内容の変化に基づいて,誤字の修正を促すための小学校での一斉指導における配慮事項について検討した。 2)知的障害児に対する定期的な指導を通して,平仮名,片仮名,漢字の書字行為に見られる発達的変化を継続的に分析した。特に,誤字を自己修正していく機能の獲得過程について詳細に検討した。 3)視覚障害児に対する定期的な指導を通して,書字における視覚機能の役割について継続的に分析した。特に,拡大読書機を使用して文字を書く際の目の使い方及び筆記用具の使用状態について検討した。 4)書字学習のつまずきに関連する筆圧の分析を進めるために,従来所有していた筆圧記録・分析装置に改良を加え,書字中に筆圧を音によりフィードバックさせるための仕組みについて検討した。また,低年齢の子どもにおいても容易に筆圧を測定するために,新たな筆圧記録装置についても検討を進めた。 5)知的障害児における鏡映文字の改善過程に関する研究の成果を,平成14年9月にモスクワで開催されたSecond International Luria Memorial Conferenceにおいて発表した。
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