研究概要 |
1.器械運動の学習指導が困難な技の情報を収集することを通して以下のような知見を得た。 (1)小学校教師へのインタビュー調査から,器械運動の学習指導現場では,適切な下位教材(含:運動あそび)をつくり出せないことが問題となっていることを確認した。またその問題は「運動学」の知識を活用できないため生じてくることを検討から明らかにした。 (2)この知見に基づき,体育における学習指導の専門性は,適切な下位教材をつくり出して「動きの発生」に関わることを提唱するとともに,子どもに対する教材づくりで考慮すべき要素を運動学の立場から解説した(子どもに「巧みさ」を身につけさせるには)。 (3)さらに,「生涯スポーツの時代に求められる指導者像」において,スポーツ初心者への学習指導に生じる問題を浮き彫りにするとともに,問題解決への実践事例について解説した。これらは初心者指導に対する偏った認識を変革するための運動学的アプローチであり,器械運動の学習指導にとって必要不可欠な情報である。 2.器械運動の学習指導に関連する情報を文献から収集し,「教材づくり」に生じている問題とあわせて検討した結果,以下のような知見を得た。 (1)技の運動課題と技術は明らかにされているものの,多くの研究や指導書で紹介されている教材はいわゆる大きな体系であり,そこから広がる下位教材づくりの工夫を暗に期待している。 (2)しかしながら実際に運動学的知識を活用できない教師にとっては,大きな体系から派生させる教材のバリエーションづくりそのものが学習指導実践上の問題であり,指導の鋳型化や教材づくりの行き詰まりにつながっていく。 このような問題認識を背景にした「事例研究報告」を第22回スポーツ教育学会においておこなった(鉄棒運動における「け上がり」の教材づくりについて)。
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