研究概要 |
第二言語習得の分野で「情意」には様々な概念が含まれる(例えば、動機付け、不安、態度、信念、感情移入、自己評価)。これらは互いに関連している。本研究では、まずこれらの概念から読解に影響する情意の理論的枠組みを特定し、幅広い概念の中で何に焦点をあわせるかを決めなくてはいけない。近年の研究で読書への態度(reading attitude)という概念のモデルが発展してきているということがわかった。McKenna(1994),Mathewsom(1994)などがその例であるが、それらを踏まえて、一般的に浸透しつつある枠組は、読書への態度は認知情意・行動の3つの要素からなるというものである。このモデルは一般に情意と考えられる概念を扱う場合であっても、認知と情意を切り離すことはできないことを示唆し、著者の行った予備調査の結果壱それを支持していた。予備調査は比較的少人数の学生にアンケートを実施し、因子分析を使って読書に対する態度を取り出したのであるが、その中には認知的側面と考えられるものも、情意的側面と考えられるものも含まれていた。そしてそれらは動機的志向性(motivational orientation)という概念でまとめられるように思われた。そこで本研究では動機的志向性の中の1つの要素として情意的傾向を位置づけることとし(予備調査結果ではそれは「読書から得られる感情的満足」と解釈された)、認知的側面と考えられる要素と一緒にして、それらが読書習慣・第二言語能力・多読への取り組みなどとどう関係しているかを調べることにした。これが本研究の1つの枠組みであるが、もう1つの枠組みはすでに知られている言語閾値仮説(linguistic threshold hypothesis)である。なお、本年度は上で述べた予備調査を通して、本調査で使うアンケート項目を決定することができた。また、英語力を測るテストについても信頼性を検証することができた。
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