本研究は日本人英語学習者(大学生)の、母語での読書習慣、読解を中心とした英語学習の様子、母語と英語の読みに対する態度(reading attitudes)の関連、および2言語での態度が英語の多読に与える影響について調べたものである。本研究の貢献は以下のような点にある。 1)大学生の読書習慣、英語学習について実態の一端を把握したこと。 2)これまで認知的側面(読解力・読解方略)からのみ行われていた、母語と外国語の読みの関係という研究課題に、情意的側面(態度)から取り組むことで、この研究課題の領域、方法論を広げ、かつ読みにおける認知的側面と情意的側面の類似点、相違点を明らかにしたこと。 3)2)で記したような理論的研究を、英語の多読指導という教育実践に結びつけ、学習者の持つ2言語での読みに対する態度が多読にとって重要であることを示したこと。 読書習慣については、大学生が本を読まなくなっている様子が明確にでてきた。しかし、彼らの本に対する態度は概ね好意的であり、読書の重要性やおもしろさに気付けば本を読む可能性のあることが示唆された。英語学習については個人差があり、授業以外で自主的に勉強する人は、概ね英語に対して好意的な態度を持っていた。 母語で培った読みに対する態度は英語の読みにも転移することが示された。しかし、認知的側面で見られた英語力の影響は情意的側面については見られず、母語の読みに対する態度が英語力の影響をあまり受けることなく転移することがわかった。これは母語でどのような読書習慣、読みに対する態度を持っているかが、英語の読みにとって大切であることを示唆する。 最後に、英語の多読への取り組みには、母語と英語両方の態度が関係していることが示された。態度の中でも、影響力があるのは読むことに対する好意的感情であった。読むことはいいことだと観念的に理解するだけや、不安のような否定的感情がない、というだけでは英語の多読を促進する力にはならない。言語にかかわりなく、読むことが好きであるという感情が、学習者の多読を促進していた。
|