研究概要 |
研究期間最終年度となった平成15年度は、予定通り本調査を行い、その結果を学会における口頭発表、論文、報告書としてまとめた。前年度に行われた予備調査の結果は「オーストラリア応用言語学会」において発表した。本調査の結果は「応用言語学と言語教育に関する国際シンポジウム」(中国)において発表する予定であったが、SARSのため学会が延期されたので、残念ながら本年度中に発表はできなかった。しかし、平成16年夏に延期された同学会で発表の予定である。 本研究はアンケートにより日本人大学生の日本語と英語の読みに対する態度(reading attitude)を調べ、その関係をさぐるものである。この課題の中で特に以下の2点に焦点がおかれた。(1)これまでの研究で読解力、読解ストラテジーの転移には言語能力が重要な要因として関係することがわかっているが、同じことが読みの態度についても当てはまるのか,(2)学習者が日本語と英語で持つ読みの態度が、英語の多読にどう影響するのか。 本研究結果の主要点は次のようにまとめられる。 ・読みに対する態度は母語(日本語)から外国語(英語)の読みに転移する。 ・しかし、その転移には英語力は関係しない。(この点は読解力、読解ストラテジーなど認知的側面の転移と対照的である) ・英語の多読を促進するのは、言語に関わらず読むことに対する好意的感情である。 ・一方、読むことの価値を理性的に高く評価していても、それ自体は必ずしも多読を促進する力にはならない。 このように、読むことにおける情意的側面に焦点をあてた本研究では、母語からの転移における認知的側面と情意的側面の違いを示すと同時に、英語で読む前に母語で培われた読むことに対する態度が、英語の読みへの取り組みに影響していることを実証的に示すことができた。最終的な報告書では、大学生の読書習慣・英語学習・英語の多読指導・英文の読解速度・EPERテストについての考察という5つの視点から本研究で得られた知見をまとめた。
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