研究概要 |
ある教師が,美術教育実践を進めていくときの<意識-規範・文化>と実践する題材・単元との関係について,以下の研究課題1,2を設定し進めた.本年度は,その一部について,第31回国際美術教育学会(InSEA-The International Society for Education through Art)世界会議ニューヨーク大会Proceedings誌上及び口頭,奈良教育大学紀要誌上,公刊図書誌上で発表した. 課題1(-昭和40年(1965)頃から現在までの美術教育実践における課題意識の変遷)については,教科書・教師用指導書,民間教育運動・研究サークル研究誌などの資料収集と整理・構造化をはかった.民間教育運動団体の強い影響力から,しだいに,文部省(現文科省)主導へと移行した美術教育実践は,教師の課題意識とその実践題材も大きく変えている.近年では,学習指導要領の授業時数の減少,小学校図画工作科「造形的な遊び」分野,小中学校「鑑賞分野」などについての対処の中で,混乱や閉塞感が生じていることが確認された. 課題2(-現役教師の<意識-規範・文化>と実施題材・単元調査)については,現職教員大学院生を中心として,面接調査,教育現場での授業観察,実践活動撮影を行い,基礎記録を作成しつつある.現在までに整理した段階では,次のようなことが言える.美術教育は,教師のもつ<意識-規範・文化>が大きく左右する教科・領域の一つであるが,学生期・教職初期に形成された<意識>が,その後に根強く残る傾向がある.これが,ときには,職能成長の妨げになることがあり,大学院などでの研修制度における,時期,期間,内容を構築する上で,大きな示唆となる.
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