本年度は、昨年度実施し、学会(第33回中国地区英語教育学会(島根大学)2002.6.29)において口頭発表したパイロットスタディについて、学会誌に投稿していたものが受理され掲載された(裏面参照)。これによって、学習者の言語的問題の気づき、問題解決のためのコミュニケーション方略使用についての気づき、及び、相手から与えられる言語形式への気づきが当該言語項目の習得に寄与している可能性が浮き彫りにされた。 ただし、相手から与えられる言語形式への気づきとそれ以降の習得には、その言語形式に代わってコミュニケーション方略として使用した言語形式との類似性の度合いが関係していそうであることが明らかになった。しかし、言語的問題の気づきの有無を統制してはいなかったし、さらには、気づきの指標がプロトコール内の自己申告であることによってその客観性に疑問があることが分かった。 そこで、今年度は、これらの結果と問題点を踏まえて、新たな調査研究を行った。対象は、日本人英語学習者(大学生)で、筆記での言語生成(英作文)課題を与えるグループと与えないグループを設けることによって、言語的問題への気づきを統制するとともに、目標となる言語形式は口頭で与え、ディクテーションできたことをもって当該言語形式への気づきの指標とすることにした。そのような実験計画によって、「言語的問題への気づき」と「自分で生成した言語形式とモデル文中の言語形式との違いの度合い」が、「言語形式への気づき」さらには「言語形式の習得」とどのように関係しているのかを明らかにすることができると考えた。しかし、ディクテーション課題は調査参加者には難しすぎる課題であったようで、有意味な結果を引き出すことには至らなかった。 したがって、来年度はこの反省のもとに、新たな実験計画で再調査し、要因間の関係性を見出したい。
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